にっぽんの仏像(壱)菩薩

広隆寺 - 弥勒菩薩半跏思惟像



さあ、みなさん。美しき仏像の世界に足を踏み入れていきましょう。


日々の忙しさにささくれ立つあなたの心に、一筋の光明が差すことでしょう。


仏像はにっぽんの心です。


仏像には、仏像を大切に奉じてきた日本人の精神が映し出されているのです。



仏像は大きく4つのカテゴリーに分類することができます。


「如来」「菩薩」「明王」「天部」


その中から、最初に取り上げるのは「菩薩」であります。「◯◯菩薩」や「菩薩のように慈悲深い」といったように、「菩薩」という言葉に普段から馴染みがあります。実際のところ、仏教における「菩薩」とは、一体なんなのでしょうか。



菩薩とは

菩薩とは、菩提薩埵(ボーディ・サットヴァ)を縮めた言葉。菩提薩埵=「悟りを求める者」という意味です。悩み苦しむ人々に寄り添い、自分自身の悟りよりも、他者の救済を優先しようとする修行者なのですね。如来の衆生救済の補佐をする役割を担います。


個人的には、東慶寺の「水月観音菩薩半跏像」の美しさに、ひときわ目を奪われます。水月観音は、観音菩薩の変身姿の一つです。

東慶寺 - 水月観音菩薩半跏像



三尊像

仏像鑑賞をする上で、「三尊像」の組み合わせを覚えるだけでも、かなり楽しみが増します。三尊像とは、センターに「如来」1体、両サイドに「菩薩」2体を配置したフォーメーションのこと(下図参照)。

三千院 - 阿弥陀三尊(出典:http://www.kyotokanko.co.jp)



【代表的な三尊像】

・「釈迦三尊」とは、釈迦如来の両脇に普賢菩薩文殊菩薩

・「薬師三尊」とは、薬師如来の両脇に日光菩薩月光菩薩

・「阿弥陀三尊」は、阿弥陀如来の両脇に観音菩薩勢至菩薩




花札で言うところの「萩・紅葉・牡丹」をそろえて、「猪鹿蝶」になるのと同じかな。う~ん、やっぱり、ちがうかも。。。




菩薩の種類

大乗仏教は「菩薩の仏教」とも言われ、多くの菩薩が生み出されました。菩薩は、われわれ凡夫に寄り添ってくれる有り難い存在です。そのため、菩薩の中には、悟りを開いて如来になる資格があるのに、「すべての人々を救済するまで、あえて如来にならない」と誓いを立てた菩薩も存在します。


1.弥勒菩薩

薬師寺 - 弥勒菩薩坐像


弥勒菩薩は、多くの菩薩の中でも最初に誕生した菩薩です。菩薩の中でも、絶対に抑えておきたいところ。弥勒菩薩は、56億7千万年後、如来になることが約束されている未来仏です。現在は、天界の兜率天におり、衆生救済のために修行を重ねています。弥勒菩薩には、如来として降臨したお姿の「弥勒如来像」も存在します。また、広隆寺の半跏思惟像は超有名ですので、どこかしらで見かけたことがあるはずです。

広隆寺 - 弥勒菩薩半跏思惟像



2.観音菩薩

三千院 - 観音菩薩坐像


観音様とは、この観音菩薩のこと。ほかに呼び名は、観世音や観自在など。多くの人々を救うために、願いに応じてさまざまな姿に変身します。変化観音と呼ばれ、その変身の数は33とも言われます。お姿を変えながら、あらゆる災いや悩み、苦しみから我々を救済してくださるので、「観音様、観音様」と有り難がられるのでしょうね。次にご紹介する「十一面観音」や「千手観音」は、観音菩薩の変身バージョンでございます。


 2-1.十一面観音菩薩

向源寺 - 十一面観音立像


変化観音の代表格がこの十一面観音です。人気が高いだけに仏像の傑作も多く、国宝・重要文化財に指定された数は最も多くあります。十一面とは「東・西・南・北・東北・東南・北西・南西・天・地」のこと。頭部にあつらえた十一面の顔は、あらゆる方向を見通し・あらゆる悩みや願いを叶える、ことを表現しています。


 2-2.千手観音菩薩

葛井寺 - 千手観音菩薩坐像


みんな大好き、千手観音菩薩。正式には「千手千眼観世音菩薩」。千の慈眼で人々の苦しみを見て、千の慈悲の手で人々を苦しみから救います。実際に千の手を持つ像も見られますが、通常は42手で造られることがほとんどです。なぜ42手なのでしょう。それには理由があります。1本の手で25の世界を救うとされており、25 × 40 = 1,000ですから(合掌している2本の手は除くので40手)、千の世界の人々を救うことができるのです。



3.勢至菩薩

三千院 - 勢至菩薩坐像


単独でいることはほぼなく、阿弥陀如来の右側(向かって左)が定位置。「阿弥陀三尊」の大事な一角を担います。智慧の光をつかさどり、その光で衆生を照らし救うと言われます。



4.普賢菩薩

大倉集古館 - 普賢菩薩騎象像


普賢菩薩は、普(あまね)く賢い者、つまり賢者のこと。あらゆる時、あらゆる場所に現れて仏の教えを説き、慈悲と理知によって人々を救います。六牙の白象に乗っているので、覚えやすい。



5.文殊菩薩

興福寺 - 文殊菩薩坐像


「三人寄れば文殊の知恵」でおなじみ、文殊菩薩です。なんと実在の人物で、釈迦のお弟子さんでした。弟子の中でも優れた智慧の持ち主として知られています。よーく見ると、智慧と強さの象徴である獅子の背に乗っています。一番下の獅子が巨大なバージョンもあります。



6.地蔵菩薩

お地蔵さんでおなじみの地蔵菩薩。六道(※)を輪廻して苦しむ衆生を、救済する役割の菩薩です。地獄に落ちた人を救えるのは地蔵菩薩だけである、という信仰は人々をとりこにしました。とりわけ民衆からの篤い信仰を集めたと言います。私の大好きなアニメ『まんが日本昔ばなし』の中には「身代わり地蔵」「笠地蔵」の回がありますし、全国各地のお寺には今でも「身代わり地蔵」が置かれております。お地蔵さん人気の高さが伺えます。



※六道(りくどう・ろくどう)

六道とは、人間が輪廻転生すると言われる6つの境涯のこと。天上界、人間界、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道を指す。ちなみに、三島由紀夫の遺作『豊饒の海』(四部作:『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』)の最終巻に『天人五衰』がある。この天人五衰という言葉は、六道の天上界に住まう天人に由来する。長寿の末に死を迎える天人は、死にゆくとき、5つの段階を経て、朽ちていくという。その様子を表した言葉が「天人五衰」なのです。


次回は、「にっぽんの仏像(弐)如来」編でお会いしましょう。

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