甲州石班澤|葛飾北斎|冨嶽三十六景|

1831年頃 すみだ北斎美術館蔵
「冨嶽三十六景 甲州石班澤」



冨嶽三十六景 甲州石班澤(こうしゅうかじかざわ)

現在の山梨県南巨摩みなみこま郡富士川町鰍沢(かじかざわ)の景観を描いたものです。富士川の激しい荒波の迫力いっぱいな本図は、冨嶽三十六景シリーズの藍摺作品の中でも傑作として評価されています。


くの字に体を曲げて網を引く漁師と富士山が相似形な点から、北斎の幾何学的な構成力の巧みさをうかがわせる図と言えます。




ベロ藍

北斎の風景画の特徴として、目の醒めるようなブルーがあります。この藍色、正式には「プルシアンブルー」、ドイツから輸入された「ベルリン藍(ベロリン藍)」、通称「ベロ藍」と呼ばれる色です。1820年代後半より安価に輸入できるようになり、絵師たちの間で広く使われるようになりました。伝統的な植物性の藍色では出せない、鮮やかで深みのあるブルーです。さらに濃淡やぼかしの調整もしやすかったため、北斎も多用したようです。



本作「甲州石班澤」をあらためて見てみる。手前の岩場と海に濃い藍色が、遠景になるにつれて薄い藍が用いられています。この繊細なグラデーションによる奥行きの表現は、ベロ藍の貢献もさることながら、北斎の手腕がいかんなく発揮されたところが大きく影響しているように思います。



ちなみに、フィンセント・ファン・ゴッホの「星月夜」においても、このプルシアンブルーが使用されています。

1889年 ニューヨーク近代美術館蔵
「星月夜(糸杉と村)」




◇─◇─◇─◇─◇─◇─◇─◇─◇

† 葛飾北斎 Katsushika Hokusai: 宝暦10年(1760)― 嘉永2年(1849)江戸後期の浮世絵師。代表作に『富嶽三十六景』や『北斎漫画』『東海道五十三次』があり、世界的にも著名な画家である。

HAL's puG Blog

晴明 [HAL] によるブログ。ときどき、愛犬puGがつぶやくかも♡