お米といえば、ササニシキ


新米の季節です。稲作には88の手間がかかるそうです。だから「米」という漢字は「八十八」を組み合わせたとか。「88歳」を米寿といいます。「米」という漢字を分解すると、「八十八」になるから、、、って有名すぎて今さらですね。



コシヒカリ、ななつぼし、あきたこまち、ひとめぼれ、、、


いまや国産米はブランド化され、群雄割拠の戦国時代。全国各地でどんどん新品種のお米が誕生していると、お米屋さんは嬉しそうに語ります。そんな米業界の盛り上がりを尻目に、静かにメインストリームから姿を消したお米の話をさせてください。わたしの最も愛したお米「ササニシキ」です。今では「幻のお米」などと不名誉な呼ばれ方をされます。お米は消費者に食べてもらってなんぼですから。



ササニシキはなぜ消えたのか?

ササニシキは、ササシグレとハツニシキを掛け合わせて生まれた品種です。平成生まれの皆さんは、そもそも存在自体を知らないかもしれません。今ではササニシキの作付面積は1%にも満たないのですから、そうなっても仕方ありません(約0.4%)。かつては、コシヒカリと共に両横綱と言われた人気品種でした。しかし、稲の倒れやすさと「いもち病」に弱いというウィークポイントを冷害につけこまれ、一気に壊滅に追い込まれてしまったのです。


極めつきは皆さまも記憶に新しいでしょう。そう!・・・1993年の冷害です。「平成の米騒動」とも言われた記録的な冷夏による米不足。タイ米を輸入したのもこの時でした。こうなっては農家も背に腹はかえられません。冷害に強い「ひとめぼれ」に作付けを転換するしかありませんでした。


現在の市場はコシヒカリ1強です。コシヒカリとコシヒカリ系のお米が70%を占めます。消費者の嗜好も「粘りの強い」コシヒカリを好む傾向にあるようです。




寿司こそササニシキ

ササニシキは、さっぱりとした上品な味わいです。粘り気が少なく、ほぐれやすいのが特徴で、高級寿司店でよく使用されています。寿司酢を入れてもベタベタしないため、寿司職人に好まれるようです。実際に「うちはササニシキ使用です」をセールスポイントにしている寿司店もあるほど。このため一般消費者向けよりも、寿司店への供給が多いのです。



ひとつ告白をすると、わたしはかつて「米はササニシキしか食べない」という原理主義者でした。ブランド米としてもてはやされるコシヒカリを敵視して、一切コシヒカリを口にしない人間だったのです。しかし、ほとんど流通しないササニシキだけを追い求めれば、当然ですがお米自体を食べる機会が減っていきます。


そんなわたしがコシヒカリを食べるようになったのは、ある出来事がきっかけでした。なじみの寿司屋で酔いが回り、いつものように管を巻いていたときのことです。お互いに歳が近いこともあって、ここは『大将』『兄さん』の間柄で親しくさせてもらっている行きつけのお店です。



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ある寿司店にて

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私:「なぁ~にが、コシヒカリだ!どいつもこいつも『コシヒカリ、コシヒカリ』って面白くねぇや。あんなに甘くてネバネバした米が食えるかっつーんだ!」



大将:「今日も荒れてますね(笑)。兄さん、これ握ってみたんで、よかったらちょっと食べてもらえませんか?」



私:「なんだい?大将が薦めてくれるなんて、めずらしいこともあるもんだね。それじゃあ、せっかくだから頂こうか。もぐもぐ。。。うん、美味しい握りって感じだね。なかなかイケるじゃない。ところで大将、これがどうしたんだい?」



大将:「兄さん、じつはそれ、、、コシヒカリで握った寿司なんですよ」



私:「!!!」



大将:「怒らんとってください。兄さんからは『寿司はササニシキだ!』って耳にタコができるくらい聞かされてます。でも、兄さんに分かってほしかったんです。


たしかにあっしら板前ぇはササニシキびいきです。あっさりして和食に合う最高の米だと思っております。だからって、兄さんまでササニシキにこだわることなんてないですよ。本当は兄さんがすべての米を愛してるのはよく知ってますから。


今の兄さんを見てるのはつらいですよ。だって、世の中はもうコシヒカリが大勢を占めてるんです。いつまでも『コシヒカリは絶対食わない』なんて言ってたら、いずれ大好きな白米が食べられなくなってしまいます。


もう十分にササニシキへの義理は通しましたよ。ササニシキも分かってくれますって!」



私:「そうか。。。大将、そこまで心配してくれてたんだな。ありがとな。おかげで目が覚めたよ」



大将:「兄さん。。。」



私:「イネってやつは、穂先が実るほどにしなってきて、まるで人間が頭(こうべ)を垂れるようなんだよな。ことわざにもあるじゃないか。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』って。おれはいつの間にか忘れてたのかもしれない。生産者の皆さんが丹精込めて育ててくれた「お米」を頂いているっていう謙虚な姿勢をさ。大将、おれイチから出直してみるよ!」



大将:「兄さんならきっと分かってくれると信じてました!」



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こうして小さな「米騒動」は収束したのでした
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お米が好きな人であれば、最後にササニシキにたどり着く。わたしはそう信じています。今度、美味いお寿司屋さんに入ったら聞いてみてください。「うちは宮城のササニシキを使ってるよ」というお寿司屋さんが、きっと日本にはたくさんありますから。 

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