名画で辿るギリシャ神話(2)

古代ギリシャにおいて、戦争は切っても切れないものだった。多民族の侵入、領土拡大、文明衝突など。そのような不安定な情勢の中であれば、市民のあいだに「戦いの神」への信仰が生まれるのも自然な流れと言える。実際、ギリシャ神話の主役オリュンポス十二神の中にも「戦いの神」がいる。知略の女神アテナと暴虐のアレスの2人である。一方は民衆の信仰を集め、他方は忌み嫌われた。今回はこの両極端な2人の神を見ていきたい。



#8. 知恵と戦争の女神 - アテナ

アテナ(ギ)***ミネルヴァ(ロ)***ミナーヴァ(英)


アテナは父ゼウスの頭部から飛び出して誕生した女神だ。生まれた瞬間から武装していたと言われる。ギリシャの首都アテナイ(現アテネ)は、この女神アテナに由来する。


また、ギリシャの首都アテネにある世界遺産「パルテノン神殿」は女神アテナを祀った神殿である。パルテノンはギリシャ語で「処女」を意味する。近づいてくる男神たちから純潔を守り通したアテナを称えている。パルテノン神殿といえば、ドーリア式の柱が46本!唯一無二のドーリア式建築物であり、スタイロベートの湾曲とエンタシスとの調和が絶妙である。さらにアーキトレーブも......



話を戻すと、彼女の登場エピソードがまた興味深い。

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ゼウスには妻がいた。叡智の女神メティスである。そんな中、ゼウスはある予言を耳にする。「メティスの身ごもる男子は、将来ゼウスの王位を奪い取る」という予言である。予言の実現を恐れたゼウスは、妻メティスを丸ごと飲み込んでしまう。しかし、メティスのお腹にはすでに新たな命が宿っており、飲み込まれた後も胎児は成長を続けていた。


月日が流れたある日、ゼウスは激しい頭痛に悩まされる。辛抱できなくなったゼウスがヘパイストスに斧で頭をかち割らせると、雄叫びを上げてアテナが飛び出した。その時点ですでに黄金の甲冑を身にまとい、闘争心に燃えていた。それと同時に、母親メティスの叡智も受け継いでいたため、知恵や技術といった才能も備える。そのため、血なま臭い戦いを求める軍神アレスとは趣を異にする。

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クリムト Gustav Klimt『パラス・アテナ』ウイーン市立歴史美術館



ボッティチェリ Sandro Botticelli『パラスとケンタウロス 』ウフィツィ美術館



マンテーニャ Andrea Mantegna『美徳の森から悪徳を追い出すアテナ』ルーブル美術館



聖闘士星矢のアテナ(城戸沙織)




#7. 軍神 - アレス

アレス(ギ)***マルス(ロ)***マーズ(英)


一方、アテナと対照的なのが軍神アレスである。同じ戦いの神でありながら、ギリシャの人々からの信仰はそれほど集めなかった。実際、ギリシャ神話の中でアレスが主役を張るエピソードは出てこない。

アテナが光のライトサイドとすれば、アレスは暗黒のダークサイドという見方が分かりやすい。アレスの引き起こす戦争で冥界の住人となる死者が増えるため、「冥界の王ハデス」とは仲が良かったとされている。


アレスの側面は、戦場での狂乱・破壊その性格は粗野で残忍。勇敢でたくましいというよりは、気性が荒く単なる争い好きと見られていたようだ。父ゼウスからも「戦闘のことしか頭にない」と言われている。その後、ギリシャ神話の影響を受けたローマ神話では評価が一変する。火星=マーズもアレスのローマよみ「マルス」が起源と言われている。

ボッティチェリ Sandro Botticelli『ヴィーナスとマルス』ロンドン・ナショナル・ギャラリー


疲れ果て眠る軍神マルス(右)と憂いの表情を浮かべる女神ヴィーナス(左)。画面奥には、マルスの特徴である巨大な槍が見て取れる。マルスはヴィーナスの浮気相手だった。実はその現場を旦那のヘパイストスに見つかり、網で捕獲されて神々の面前で笑いものにされたこともある。その一件で両名は反省したと思いきや、その後も逢瀬を重ねて、結局6人の子をもうけるのだった。



ジャック=ルイ・ダヴィッド Jacques-Louis David 『ヴィーナスと三美神に武器を取り上げられるマルス』ベルギー王立美術館

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