神話の原型(3)アンドロメダ型神話

月岡芳年『日本略史之内 素戔嗚尊出雲の簸川上に八頭蛇を退治し給ふ図』



アンドロメダの神話

アンドロメダ型神話」とは、英雄が強力な怪物と戦って女性を救い出す、というプロットの神話。やはり世界中に類似の物語が発見されている。例えば、中国の『捜神記』である。洞穴に住む大蛇は、毎年少女の生贄を要求するが、最後に残った末娘の知恵によって退治される。

ギュスターヴ・ドレ Paul Gustave Doré『アンドロメダ』私蔵


アンドロメダ神話のあらすじは以下の通り。

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アンドロメダは母親の傲慢による「とばっちり」を受けた気の毒な娘である。母カシオペアが「我が娘アンドロメダの美貌は神にも勝る」と豪語したところ、海の神ポセイドンの怒りを買ってしまった。神の怒りをおさめるため、生贄にされるアンドロメダ。怪物・化けクジラの供物として波の打ち寄せる岩に鎖で縛りつけられるのだった。

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そこを運良く英雄ペルセウスが通りかかった。メドゥーサ退治を終え、その首を携えて帰還するところだったのだ。岩に降りたペルセウスは、美しいアンドロメダを見てこの状況に驚く。そして、アンドロメダから事情を聞いたペルセウスは怪物退治を買って出る。しかも「もし退治できたなら、自分の妻として迎え入れたい」とちゃっかり願い出る。

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手際よくペルセウスは、怪物にメデューサの首を見せて石に変え、見事アンドロメダを救出した。

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ピエロ・ディ・コジモ Piero di Cosimo『アンドロメダを救うペルセウス』ウフィツィ美術館



絵の中央で怪獣を退治するのがペルセウスである。ペルセウスは、目を見た者を石に変えてしまうメデューサの首を切り落としたことで有名である。このペルセウス、父である最高神ゼウスの血を引く半神の英雄とされる。そして母のダナエは人間の娘である。



ダナエ

ダナエは西洋絵画で人気の主題で、たびたび登場する。なぜここまで採用されるのか不思議だ。考えられる可能性としては、ダナエが処女でありながら懐妊したことから「処女懐胎」の予型と見なされたのかもしれない。


このダナエという女性は、父王によって青銅の塔に幽閉されていた。これは娘が男子と交わらないようにするのが父の狙いだった。しかし、この目論見は好色の神ゼウスに破られてしまう。黄金の雨に姿を変えたゼウスは、ダナエと接触することに成功。ダナエは懐妊する。そして、ペルセウスが誕生。このダナエをモチーフに、クリムト、ティツィアーノ、レンブラントらが見事に筆を走らせている。

クリムト Gustav Klimt『ダナエ』ギャラリー・ヴュルトレ(ウィーン)




須佐之男命と八岐大蛇

日本神話『古事記』『日本書紀』ではどうでしょう。ペルセウスに当たるのが須佐之男命(素戔嗚尊)。アンドロメダはというと、櫛名田比売(奇稲田姫)がその役目を担います。


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神々の住む天上の国・高天原より出雲の国に下ってきたスサノオ。降り立った斐伊川を上流へ進むと、美しい娘「クシナダヒメ」を囲んで老夫婦が泣いている場面に出くわします。事情を聞くと、夫婦には娘が8人いたが、ヤマタノオロチという8頭8尾の巨大な怪物に毎年一人ずつ娘を食べられてしまった。そして、今年もオロチがやってくる時期が迫っている。いよいよ最後に残った末娘のクシナダヒメも食べられてしまうと思うと、悲しくて泣いているのだという。

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老爺曰く『オロチは赤く大きな目をして、一つの胴体に、8つの頭、8つの尾があります。その体には苔ばかりか、杉や檜まで生えており、長さは8つの谷をわたり、8つの山をこえるほどです。その腹はいつも血が滲んでただれています』。スサノオはしばらく考え、こう切り出します。「ヤマタノオロチを退治する代わりにクシナダヒメを嫁に欲しい」。老夫婦は喜んでその申し出を承諾した。

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まず、スサノオは退治の前に、クシナダヒメを櫛 クシに変えて髪に差しました。それから老夫婦にこう指示しました。「8回繰り返し醸造した強い酒を造りなさい。それから8つの門を持つ垣根を作り、門ごとに8つの棚を置き、その棚ごとに作った酒を置いておくように」と。そこにヤマタノオロチがすさまじい地響きを立てながらやってきて、8つの門にそれぞれの頭を入れて、ガブガブと酒を飲み始めました。酔って眠ってしまったヤマタノオロチは、スサノオの刀で一刀両断に。ズタズタに切り裂かれたオロチの体内から発見された刀が、かの有名な「天叢雲剣(草薙剣)」であります。

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ヤマタノオロチを無事に退治したスサノオは、この出雲の地が大層気に入りました。そこで、この地にクシナダヒメと住もうと思い立ちます。そのさなか、雲が立ち上がった様子を見て、スサノオは歌を詠みました。この歌は日本で初めて詠まれた和歌として言い伝わっています。



八雲立つ 出雲八重垣 妻籠に 八重垣作る その八重垣を

画像:出雲観光協会HP

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