神話の原型(2)オルフェウス型神話

画家: ジャン=バティスト・カミーユ・コロー Jean-Baptiste-Camille Corot
Title: 黄泉の国からエウリュディケを連れ出すオルフェウス Orpheus Leading Eurydice from the Underworld
製作年: 1861年
収蔵: ヒューストン美術館



オルフェウスの物語

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1. オルフェウスはギリシャ神話に出て来る吟遊詩人で竪琴の名手。その歌声と竪琴の音色は神々のみならず、動物や草木までも魅了する力があった。ニンフ(精霊)のエウリュディケと恋に落ちて、めでたく結婚した。

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2. そんなある日、妻エウリュディケは散歩中、毒蛇に噛まれて命を落としてしまう。妻を諦めきれないオルフェウスは冥界の王ハデスに懇願し、どうにか現世に戻してもらおうとする。オルフェウスの音楽に感銘を受けたハデスは、地上に出るまで「振り返らないこと」を条件にエウリュディケを連れ出すことを許可した。

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3. 長く険しい道のりを歩き、とうとう地上へ着こうかという時。オルフェウスは彼女がちゃんと後をついて来ているか急に不安になり、思わず振り返ってしまった。その瞬間、エウリュディケは死者の国へずるずると吸い込まれるように消えていった。

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画家: ギュスターヴ・モロー Gustave Moreau
Title: オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘 Jeune fille thrace portrait la tête d'Orphée 
製作年: 1865年 
収蔵: オルセー美術館


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4. 妻を二度も死なせてしまったオルフェウスは悲嘆にくれ、以後一切女性をそばに寄せ付けなかった。すると相手にされないことに腹を立てたトラキアの巫女たちは彼に石をぶつけて殺してしまう。なおも収まらない巫女たちは、オルフェウスの死体を八つ裂きにして、頭と竪琴をヘブロス河に投げ入れた。伝説では、河を下りながらもその首は歌をうたい、竪琴は音楽を奏で続けたという。そして、竪琴は星座へと引き上げられた。今もこと座として夜空に輝き続ける。

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「振り向いてはいけない」の禁忌

以上が「オルフェウス型神話」と呼ばれるプロトタイプです。日本昔ばなしにも似たケースがあります。たとえば、『浦島太郎』と『鶴の恩返し』です。浦島太郎は玉手箱を「決して開けてはいけない」と忠告されていたし、鶴の恩返しでは「決してのぞかないで」とお願いされていました。結局どちらも我慢できずでした。


※※以前ブログでも「禁止されると余計にしたくなる心理」をご紹介しました。

>>「禁止されると余計にしたくなる心理」


ちなみに、浦島太郎は玉手箱を開けた後、鶴に変身することで一命を取りとめます。鶴となった浦島太郎は再び竜宮城に戻り、乙姫様と幸せに暮らしましたとさ。



伊邪那岐と伊邪那美

やはり日本神話『古事記』にも似通ったエピソードが存在します。夫イザナギが妻イザナミを取り戻しに行くというもの。以下がそのあらすじ。


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日本神話の女神イザナミは、火の神カグツチ出産の際の火傷が元で命を落としました。しかし、諦めきれない男神イザナギは、妻を取り戻すために黄泉の国まで下っていきます。夫が会いに来てくれたことを喜ぶイザナミですが、すでに黄泉の国の食べ物を口にしていたため、黄泉の国の住人になっていました。 そこで、妻イザナミは「帰ってもよいかを黄泉の神々と相談してきますので、待っていてください。その間、決して御殿を開けて私の姿を見ないでください」と言い残します。

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しかし、なかなか戻ってこないことに業を煮やした夫イザナギは、約束を破って中をのぞき見てしまう。するとそこには、腐敗して体中に蛆がわき、8人の雷神がまとわりつく、変わり果てた妻の姿がありました。あまりの恐ろしさにイザナギは逃げ出します。イザナミは「見てはなりませぬと申したのに、よくも恥をかかせてくれましたね」とたいそう腹を立て、黄泉の醜女たちにイザナギを追わせました。

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しつこく迫ってくる軍勢をなんとか振り切り、黄泉の国を脱出したイザナギ。すぐさま、入り口を千引岩 チビキノイワ:千人でひっぱらないと動かない岩、で黄泉に続く道を閉ざしました。この道=黄泉比良坂は、現在の出雲国の伊賦夜坂のことです。

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女神イザナミは「あなたがそのような仕打ちをするのなら、私は一日に1,000人の人間を黄泉に連れ去ります」と言います。男神イザナギは「そなたが1,000人を黄泉に連れ去るなら、私は一日に1,500人を作ろう」と言い、二人は決別しました。 

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その後、黄泉の国から帰った夫イザナギは禊 ミソギをし、天照大御神・月読命・須佐之男命などの神々が生まれました。 妻イザナミは黄泉国の食べ物を食べたため、体が穢れてしまったのです。これを「黄泉戸喫 ヨモツヘグイ」と言います。ちなみに「よみがえる」という言葉は、「黄泉」から「帰る」というのが語源だそうです。


画像:東出雲 観光&物産情報HP

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