名画で辿るギリシャ神話(1)

"Concilio de los dioses / 神々の会議" Giovanni Lanfranco ボルゲーゼ美術館(イタリア)



欧米の書店に行くと見かけるのがギリシャ神話の絵本です。子供向けの売り場には必ずギリシャ神話の絵本コーナーがあります。さらに、中学や高校の演劇クラスではギリシャ神話の素材が登場します。日本人が『竹取物語』や『源氏物語』を知っているように、欧米人はギリシャ神話に親しんでいるのです。



絵画の階層構造

西洋の絵画を見るとき、必ずといっていいほど神話をテーマにした作品に出会います。それもそのはずで、17世紀頃から西洋美術界においては、「テーマのヒエラルキー」が存在しました。作品自体のクオリティよりも先に、絵画のテーマによって高尚~低俗というレッテル貼りがされていたのです。


【主題ヒエラルキー】
(高尚)宗教画、神話画、歴史画 >>>>> (低俗)肖像画、風景画、静物画



このように、高尚な主題でなければアカデミーから評価されない時代がありました。しかし、のちに登場する写実主義印象派の画家たちが異議を唱えることで、時代は移り変わっていきます。現在、絵画の1ジャンルとしてすっかり定着している「風景画」。自然の美しさや壮大さを描くこの風景画が定着するのも19世紀後半から。では、なにがそうさせたか?ひとつには、写実主義や印象派の画家たちの中で、「現実を観察する」という意識の変革が生まれたからと考えられています。



ギリシャ神話は誰が作ったのか?

紀元前8世紀頃に生きたホメロスの二大叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』がその原型とされています。それから後に、神話を体系的にまとめたのがヘシオドス『神統記』です。これまで口承だった物語を文字の形で記録に留め、神々や英雄たちの関係や秩序を整理しました。古代ギリシア人曰く「神々に関することは、すべてホメロスとヘシオドスから教えられた」と。


さらに、三大悲劇詩人(アイスキュロスソフォクレスエウリピデス)たちの働きも見逃せません。ギリシャ神話に奥行きや深みをもたらし、神話をより体系的により強固に世界観を築き上げていきました。その後、ローマ文化とキリスト教が加わりました。このせいでギリシャ神話は散らかったイメージが拭えないのでしょうね。



オリュンポス十二神

オリュンポス十二神とは、ギリシャ神話の主な主人公たち。オリュンポス山の山頂に住むとされる十二人の神々のことです。神々の呼び方には3通りあります。ギリシャよみ・ローマよみ・英語よみです。例えば、「美と愛の女神」アフロディーテ(ギリシャ名)はピンと来ませんが、ヴィーナス(英語名)は聞き覚えがありますよね。呼び方が違うだけで、同じ神様を指します。


  #1. 最高神      ゼウス
  #2. 結婚と出産の女神 ヘラ
  #3. 海の神      ポセイドン
  #4. 豊穣の女神    デメテル
  #5. 美と愛の女神   アフロディーテ
  #6. 鍛冶の神     ヘパイストス
  #7. 軍神       アレス
  #8. 知恵と戦争の女神 アテナ
  #9. 弓と信託の神   アポロン
#10. 狩猟と月の神   アルテミス
#11. 商業と旅行の神  ヘルメス
#12. 酒と狂気の神   デュオニソス


ちなみに、『美少女戦士セーラームーン』の登場人物の名も、ギリシャ神話に由来しています。ストーリーのプロット自体がギリシャ神話をベースにしていると聞いています。

セーラーマーキュリー=ヘルメス
セーラーマーズ   =アレス
セーラージュピター =ゼウス
セーラーヴィーナス =アフロディーテ




#5. 美と愛の女神 - アフロディーテ

ボッティチェリ Sandro Botticelli『ヴィーナスの誕生 The Birth of Venus』ウフィツィ美術館 


ホタテ貝の小舟に乗って、キプロス島の浅瀬へ流れ着くシーン『ヴィーナスの誕生』。ウラノスの男性器を飲み込んだ海から白い泡が沸き立ち(ギリシャ語で「アプロ」は泡の意味)、そこからアプロディテ=ヴィーナスは生まれました。ヴィーナスは生まれた瞬間から成人女性で、赤ちゃん期や少女期はありません。その美貌ゆえに恋多き女神で、夫ヘパイストスがいるにも関わらず、たびたび不貞を働いています。



ボッティチェリ Sandro Botticelli『春(プリマベーラ)La Primavera』ウフィツィ美術館


この作品にもヴィーナスが登場します。上空にキューピッド(クピドあるいはエロス)が目隠しで弓に矢をつがえています。その真下に立つのがアフロディーテです。そして、画面左端にいるのが神々の伝令役「ヘルメス」です。翼のついたサンダル、二匹の蛇がからみついた杖(カドゥケウスの杖)がその目印。


ヘルメスは旅人や商人の守護だけでなく、泥棒・詐欺師や盗賊まで守護しています。その由来は生後まもなくのエピソードにあります。ヘルメスが生まれて間もない赤ちゃん時代の話。異母兄にあたるアポロンの牧場から牛を50頭を盗みました。結局、悪事がバレて牛の返還を求められますが、巧みな交渉により牛を返さずに済みます。そればかりか、アポロンの持っていたカドゥケウスの杖までまんまと手に入れてしまったのです。



ブーグロー William-Adolphe Bouguereau『ヴィーナスの誕生 The Birth of Venus』オルセー美術館



カバネル Alexandre Cabanel『ヴィーナスの誕生 The Birth of Venus』オルセー美術館


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