四大中華

出典:クックドア



ある日、どうしても酢豚が食べたくなって、街の中華料理屋に入る。ベトベトした歩きにくい床の上をなんとか歩く。ようやくテーブルにつく。ホッと、ひと息つく。テーブルに置かれた油まみれのメニューを開く。この汚れた感じ、決して不快ではない。むしろウマイ酢豚にありつけそうだ、という期待感が高まっていく。メニューを丁寧に1行目から、全ページ見渡す。



ん?酢豚がない?もう一度、メニューを見る。やはりない。これはどうしたことか。中華料理店に主力商品の酢豚がない、そんなことがありえるのか。上目づかいで店主の方を見やる。わたしのオーダーを待っている。心なしか店内にいる他の客も、わたしのオーダーに聞き耳を立てている気がする。


このしびれるような空気に耐えられなくなったわたしは注文を告げる。

「エ、エビチリをください...」

わたしは声にならない声をしぼり出した。



なんということだ!こんな屈辱があるだろうか。意気揚々と酢豚を食べにきた人間が、およそ似ても似つかぬエビチリなぞを食わされるとは。



間もなくエビチリが運ばれてくる。このスピード感が中華の魅力だ。しかし、いつもより余計に海老がプリプリに見えるのはなぜだ。わたしの心がプリプリ怒っているから、そう見えるのか。いや、くだらないことはいい。半ばやけくそ気味に海老を口に運ぶ。



、、、なんと!絶妙な甘辛具合だ。口の中で甘みと辛みが追いかけっこしているようだ。そして、最後にやや「辛」が勝つこの味付けバランス、、、まさか!


わたしはすべてを悟った。そうか、そういうことか。この店は「四川料理」の店なのだ!酢豚を扱っていないのは当然だ。なんたる失態だ。帰りぎわ、外の看板に目をやる。なんだ、ちゃんと「四川料理」と書いてあるではないか。



人はときに間違いを起こす。それは仕方がない。その過ちを反省し、教訓とするから成長できる。しかし、犯してはならないミスもある。酢豚を食べたいにも関わらず、酢豚の置いていない店に入る。これは人生で起こしてはならない事件だ。


こういった惨事を後世の人々が起こさないために、ここに中華料理のカテゴリー分類を記す。



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中国のことばに「東酸、西辣、南甜、北鹹」とあります。

「東方の料理はすっぱく、西方の料理は辛く、南方の料理は甘く、北方の料理は塩からい」


地方によって味の特徴があることを見事に表しています。



◆四川料理(川菜Chuān cài)

代表的料理 / 麻婆豆腐、担々麺、酸辣湯、回鍋肉、青椒肉絲、エビチリ、棒々鶏

味的特徴 / 香辛料を使った辛い料理が多い

唐辛子や花椒などをふんだんに使い、ビリビリ痺れるような辛さが四川料理には多く見られます。西方の四川は盆地のため、夏はうだるような暑さが続く地域。それに負けないよう、食欲増進・夏バテ防止を期待して、辛味の強い料理が発展してきたと言われています。



◆広東料理(粤菜Yuè cài)

代表的料理 / 酢豚、フカヒレ料理、焼売

味的特徴 / 薄味で素材を活かす

「食は広州(広東省の中心地)にあり」と言われたほど、中華料理の代表選手が広東料理です。素材の持ち味を活かしたあっさり淡い薄味。日本の横浜中華街をはじめ、世界で最も食されているのが広東料理です。「広東人は飛ぶものは飛行機以外、泳ぐものは潜水艦以外、四つ足は机と椅子以外、二本足は親以外なんでも食べる」、食への情熱はんぱない。



◆北京料理(京菜jīng cài)

代表的料理 / 餃子、北京ダック、ピータン

味的特徴 / 味が濃く塩辛い

北方に位置する中国の首都・北京。北京料理のルーツは宮廷料理にあります。貴族の食事にふさわしく、趣向を凝らしたゴージャスな見栄えが特徴。ネギやニンニク、生姜などの薬味をよく使います。



◆上海料理(上海菜Shànghǎi cài)

代表的料理 / 上海蟹、小籠包、トンポーロー

味的特徴 / 甘みが強い

海に面する中国最大の都市・上海。新鮮な魚介類をふんだんに使った料理が数多くあります。まったり濃厚な身の味わいの上海蟹小籠包豚の角煮。いずれも上海が発祥です。酒、黒酢、醤油などを用いた甘く濃厚でリッチな味わいが特徴。





とはいえ、最近はどこの店でも麻婆豆腐や餃子は置いてあります。日本の中華料理店は厳密なカテゴリー分けがないため、普段はあまり気にしなくても暮らしていけますね。たまに高級なお店だと「四川料理の◯◯」とわざわざ掲げてくれています。そういうお店に行ったら「辛い料理が得意なんだなぁ」と思って、オーダーの仕方を変えてみるのも面白いかもしれません。



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