進化論の基礎知識(4)なぜ一卵性双生児は完全に同じではないのか


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悲しいことですが、統合失調症は比較的よく見られる精神疾患です。この病気は世界各国でおよそ0.5~1%の人が発症します。研究の結果、この病気の発症には遺伝的な要因がたぶんにあることが分かっています。


その根拠の一つは、一卵性双生児にあります。一卵性の双子は、片方が統合失調症になると、50%の確率でもう一方も発症する傾向があるのです。この数字は極めて高いと言えます。なぜなら、通常の人が1%なのに対して、50%の発症率なのですから。このことから、遺伝的な要因があると言えますよね。


しかし、こう思いませんでしたか?なぜ100%ではないのか、と。


一卵性双生児はまったく同じ遺伝情報を持っているのです。しかも多くの場合、よく似た環境で育てられます。にも関わらず、半分のケースでは発症しないこともある。


同じ遺伝子を持ちながら、特徴の異なる双子が多数存在する。そこに遺伝子だけでは説明できない何かを感じざるを得ません。



「すべては遺伝で決まる」という従来の概念が覆されようとしています。


その鍵となるのが「エピジェネティクス」です。



遺伝子のスイッチ:エピジェネティクス


エピジェネティクスとは、遺伝子はスイッチがオン/オフするという概念。遺伝子の塩基配列を変えることなく、遺伝子の発現を変化させる現象です。


どうやら我々は、親から受け継いだ遺伝情報を後天的に、たとえば環境や習慣行動によって調節できるらしいのです。しかもその情報は次世代にも伝わっていくのではないかと見られています。



ひとつの例として、スウェーデンの研究で3世代にわたる追跡調査の結果を見てみましょう。調査の結果、祖父母の食生活が孫に影響を与えることが明らかになりました。


結論だけお伝えすると、祖父母が「過食すると」孫は寿命を6年も縮めるそうです(祖父母が「飢饉を経験した」グループと比べて)。


このことから、祖父母のふるまいが、子孫の体や脳の発達を変化させたり、糖尿病や心臓病のリスクを高めることが見えてきました。



20世紀以前、心臓病は珍しい病気でした。しかし現在どうでしょう。西洋での死因トップです。さらに全世界の死因の60%を占めるのも、心臓病や糖尿病などの「現代病」です。


この100年間における「現代病」患者の急速な増加は、とても遺伝子で説明がつくものではありません。やはり、環境による危険因子は無視できないでしょう。例えば、食生活の変化・生活習慣の乱れなど。



いくら食べても満腹にならない少女


実際の例をご紹介します。ドイツにどれだけ食べても満腹にならない少女がいました。巨漢の彼女の食事風景は異常だったといいます。そこで大学病院で調べてみると、原因の遺伝子が見つかりました。


なんと驚くことに、実は母親も同じ遺伝子を持っていたのです。しかし、母親の体型は昔から細く、また過食することもありませんでした。つまり、母親には肥満体質が発現していなかったのです。考えられる理由として、その母親は適度な運動や食事に気をつけるなど、普段から摂生を心がけていたことが挙げられます。つまり、生活習慣で遺伝子の発現を抑え込んでいたのです。


週に3回ジムで汗を流し、野菜豊富な食事を摂る生活を続ける。これは単に健康に良いだけでなく、実際にDNAの発現の仕方を変化させるのかもしれません。要するに、問題を起こす遺伝子の発現を抑える可能性があると。



ストレスが遺伝子のスイッチを阻害する

自己評価による社会的地位が低ければ低いほど、ストレスを感じる時間が長くなることは知られています。これ、結構重要ですね。客観的な社会的地位ではありません。あくまで自己評価としてです。


ということは、「自分には状況をコントロールする力がない」とか「どうせ自分は」といった現状否定的な思考が染み付いている場合は気をつけたほうがよさそう。


するとどうなるか?

自分で自分の免疫を下げ、成長に必要な遺伝子のスイッチもオフにしてしまう。そうして慢性的にストレスを受けた細胞は、やがて成長と複製のサイクルが乱れてくる。そのストレスは次世代にも伝わり、結果的に社会的格差は維持されてしまう。


しかしこれを逆手に取れば、希望もあります。


つまり、(1)「人生に意味がある」と前向きに考えたり、(2)よりよい人間へと成長するために新しい挑戦をしてみる、あるいは、(3)他者に貢献するといった行動で幸福感を得ることが、


あなたの人生の質を高める助けになると言えるでしょうね。



HAL ლ(´ڡ`ლ)



参考文献:『双子の遺伝子』(ダイヤモンド社)ティム・スペクター(著)(2014/9/11)
『エピジェネティクス 操られる遺伝子』(ダイヤモンド社)リチャード・C・フランシス(著)(2011/12/8)
『眠れなくなる進化論の話』(技術評論社)

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