進化論の基礎知識(3)ヒトは遺伝子のゆりかごか


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前回、前々回で進化論への理解が深まったのではないでしょうか。

今回は、いよいよ進化論の中でも最重要テーマに迫っていきます。


リチャード・ドーキンス著『利己的な遺伝子』は、書名くらいは聞いたことがあるかもしれません。ようやく人間についての考察に及びます。



パラサイト・イヴ

テレビゲームの『パラサイト・イヴ』をご存知でしょうか?


家庭用ゲーム機「プレイステーション」のゲームソフトで、このタイトルは1998年に発売されました。『バイオハザード』や『メタルギアソリッド』系のアクションRPGです。


あらすじはこうです。


ヒトの体内にあるミトコンドリアは10億年の昔から、宿主である人間を乗っ取る日を待ち続けていた。そして、1997年クリスマス・イブの夜。ミトコンドリアは覚醒の時を迎え、最初の女性の肉体を支配。ついに人類への宣戦布告を果たし、動き出す。


ミトコンドリアとはヒトの体内に存在する細胞小器官。その数を合わせると、人間の体重のおよそ10%を占めます。結構たくさん!



現代に置き換えると、人工知能AIが人類に反旗を翻すようなイメージでしょうか。最近のニュースで、AI同士が独自言語で会話を始めたという報道がありました。結局、Facebook社が強制停止したそうですが、人類の気づかぬ所でプログラムはどんどん増殖しているのかもしれません。



話を戻すと、この『パラサイト・イヴ』はいくつかの進化論の説を根拠に製作されていることが伺えます。単なる空想ではないようです。


そもそも、ミトコンドリアDNAはミトコンドリアを「乗り物」にしています。そうなると当然、細胞を、さらには生物の体を「乗り物」にしていると言えます。


このように物語の要素を拾い上げていくと、リン・マーギュリスの共生説や、リチャード・ドーキンスの唱えた「利己的遺伝子説」を包含していることが見えてきます。



生物は遺伝子を運ぶための乗り物

いよいよリチャード・ドーキンスの説に入ります。


1976年にリチャード・ドーキンスは『利己的な遺伝子』を上梓。その中で「生物は遺伝子の乗り物であり、遺伝子のために進化したに過ぎない」と主張しました。


要するに、「生物の本質は、個体の増殖ではなく、遺伝子の増殖にある」というわけです。


なぜ、個体の保存が第一義と言えないか。それは、昆虫の世界を見ると納得します。昆虫界には、自分の子どもを産まず他人に尽くす利他的行動が見られます。


例えば、ミツバチ(worker)は自分の子を産まず、女王蜂にせっせと奉仕する。あるいは巣(コロニー)の防衛・維持を務める。


明らかに個体が優先されていませんね。このような利他的行動から、個体より遺伝子が優先されるという主張にたどり着きました。※ちなみに、血縁度や遺伝子共有率なども絡んでくるのですが、長くなるので省きました。



※※補足として、「利己的」という比喩について

ドーキンス博士の提示した「利己的」という比喩は非常に誤解されやすいので補足させてください。この言葉の意味は、遺伝子が意思をもって振る舞うということではありません。冒頭で『パラサイト・イヴ』を紹介したため、余計にそのようなイメージが膨らんでしまうかもしれません。


自らを保存するという目的に向かって、盲目的に突き進む遺伝子の様子を「利己的」と表現したに過ぎません。



個体には個体の目的がある

個人的には、必ずしもミツバチの行動が自分と同じ遺伝子を増やすためのものとは言い切れないように思います。人に協力することが自分の生存に有利だから、という理由も考えられるからです。ミツバチにはミツバチなりの目的があって行動している可能性もゼロではないでしょう。


『利己的な遺伝子 The Selfish Gene』は、利己的という言葉の衝撃もあって、世間の耳目を集めました。しかし、ドーキンス博士にとって遺伝子が利己的なのは当たり前すぎて、その点をフィーチャーされても「なんでそこ?」と困ってしまう。



それよりもドーキンス博士が社会へ投げかけたかったメッセージは、こうではないかと推察します。


遺伝子が自らの保存を最優先するからといって、
遺伝子の目的が、イコール私たちの人生の目的であるとは限らない。
個体には個体の目的がある。


たとえ遺伝子の目的に適わぬ人生を歩んでも、私たちの生が無意味だということにはならない。


そのように思えてなりません。



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