晴耕雨読


人との楽しい会話では、読書が共通の話題になることも多い


どんな本を読んできた人なのか

どんなジャンルが好きなのか

を知ることで、その人のパーソナリティも見えてくる



ビジネス書が好きな人もいれば

自己啓発書、新書、小説、はたまた漫画しか読まないなど

好みは人それぞれ


もちろん、漫画より小説を読むほうが偉い、ということもない


たいていの読書好きは

「それが好きなら、これも合うよ」という感じで

オススメしてくれる、気のいい人ばかり



しかし、中には、


「ねえ、キミって本(活字本)とか読むのかい?」


という感じで、バトルを仕掛けてくる輩ヤカラがいる

特に男性に多い


「おれはこれだけ読んでるんだぜ」とでも自慢したいのだろうか?



そんな不届き者を黙らせるのに

うってつけのテクニックがある


そのテクニックとは、

小説の有名な冒頭文でアンサーを返すというもの



冒頭文とは物語の一行目

作者が最も力を入れる部分であり

自然と印象的な名文が生まれやすい箇所


なので、

本当は読んでいなくても、

有名な冒頭文をパンチライン1発かませば、


「あ、この人読んでるな」と思われる


しかも、そこから内容を深掘りされても、

「冒頭が衝撃的すぎて、内容を忘れちゃう作品だよね」とでも言っておけばオッケー




今回は、あまりにもメジャーな冒頭文は外しました

「国境の長いトンネルを抜けると雪国」「メロスは激怒した」など


知られすぎた文章はパンチ力が弱くなってしまう

あくまで、今回の狙いは「本読んでる感の演出」ですので





1. 名文

覚えておいて損なし



春が二階から落ちてきた。

『重力ピエロ』伊坂幸太郎(2006)

※文庫本で500ページ近くあるけど、一瞬で読んじゃうくらいスイスイ進む。面白いかどうかは人による。



夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

『幻の女』(原題:PHANTOM LADY) ウイリアム・アイリッシュ 稲葉昭雄訳(1976)

※サスペンス好きならオススメ。そうでなければ、特に読まなくてもいいかなぁ。結構長い。



木曾路はすべて山の中である。

『夜明け前』島崎藤村(1932)

※木曽路。しゃぶしゃぶ。



ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。

『変身』(原題:Die Verwandlung)フランツ・カフカ 原田義人訳(1915)

※不条理文学なので、慣れていないと変な感じ。短いので試しに読んでみてもいいかも。ハマる人はハマるジャンルなので。



前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すらできないことでした。

『錦繍』宮本輝(1982)

※これまでの人生で忘れられない後悔を残している人へ。



恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。

『人間失格』太宰治(1948)

※「読書するから教養がある」みたいな風潮は好きじゃない。けれども、この本は死ぬまでに一度は読んでおいたほうがいい作品のひとつ。




2. 個人的にオススメ名作

冒頭文で「おっ?」と思ったら、ぜひ読んでみてください


ストラウスはかせわぼくが考えたことや思いだしたことやこれからぼくのまわりでおこたことわせんぶかいておきなさいといった。なぜだかわからないけれども それわ大せつなことでそれでぼくが使えるかどうかわかるのだそうです。

『アルジャーノンに花束を』(原題:Flowers for Algernon) ダニエル・キイス 小尾 芙佐訳(1966)

※長編。序盤を我慢できれば、なんとか読み通せるはず。いろいろな種類の「哀しみ」が押し寄せる作品。


高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟である。徳川時代に罪人が遠島を申し渡されると、本人の親類が牢屋敷へ呼び出されて、そこで暇乞いをすることを許された。

『高瀬舟』森鴎外(1916)

※短編。情景が浮かぶ、切ない気持ち。


私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間をはばかる遠慮というよりも、そのほうが私にとって自然だからである。

『こころ』夏目漱石(1914)

※長編。教科書で読んだからみんな知ってる。でもあらためて読むといい感じ。


ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂いが、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。

『蜘蛛の糸』芥川龍之介(1918)

※短編。何度読んでも結果は変わらないなぁ。


山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい。

『草枕』夏目漱石(1906)

※この冒頭の続きもかっこいい。


それはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。

『刺青』谷崎潤一郎(1910)

※短編。フェティシズム。読み方は「しせい」。


私が自分の祖父のある事を知ったのは、私の母が産後の病気で死に、その後二月程経って不意に祖父が私の前に現れてきた、その時であった。私の六歳の時であった。

『暗夜行路』志賀直哉(1921)

※長編。矢口された話。


永いあいだ、私は自分が生まれたときの光景を見たことがあると言い張っていた。それを言い出すたびに大人たちは笑い、しまいには自分がからかわれているのかと思って、この蒼ざめた子供らしくない子供の顔を、かるい憎しみの色さした目つきで眺めた。

『仮面の告白』三島由紀夫(1949)

※今で言うところのLGBT?



3. 一度は聞いたことのある冒頭文

最後は教科書に載っていた作品で懐かしさを感じてください


月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人なり。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらへて老をむかふる者は、日々旅にして旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。

『奥の細道』松尾芭蕉(江戸時代)


祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず。唯春の夜の夢のごとし。

『平家物語』作者不詳(鎌倉時代)


男もすなる日記(ニキ)といふものを女もしてみんとてするなり。

『土佐日記』紀貫之(平安時代)


今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、万の事に使ひけり。名をばさぬきのみやつことなん言ひける。

『竹取物語』作者不詳(平安時代)



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